デジタルソリューションの活用により手術室の効率を向上させるための5つの方法
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閲覧の所要時間:13分 | 最終更新日:2021年7月6日
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今日の手術室は、高度な技術によって支えられる複雑な環境になっています。スマートデジタルテクノロジーは、手術室のセットアップをより複雑にするのではなく、ワークフローを簡素化するものでなければなりません。また、手術室スタッフの効率と生産性を向上させるものである必要があります。では、このような要求に応えるためには、テクノロジーをどのように活用すればよいでしょうか?Barcoでは、5つのトピックを考慮する必要があると考えています。
手術室を効率的に使用するためには、何よりもまず以下を考慮しなければなりません。
医療機関は、毎日のスケジュール編成という難解なパズルを絶えず解いているようなものです。予定されている治療のために十分な手術室を準備する必要に加え、外科医のニーズ、直前での変更、あらゆるタイミングでの緊急手術の発生を考慮しておくことが求められます。さらに、各治療にかかる時間はしばしば予測しにくいという事情も頭に入れておかねばなりません。医療機関では通常、手術室の調整のためにスケジューリングシステムを導入しています。
同時に、医療機関は外科手術の割り振りを可能な限り効率化することを考えます。多くの場合、万が一に備えて手術室を追加で確保しておくことも、余分なコストのもとであっても廃止はできません。しかし、外科部門が医療機関に収益をもたらす一方で、不適切なスケジューリングが医療機関にとって避けるべきコスト増につながる可能性があります。その結果、外科手術のスケジュール管理ソフトウェアはスマート化が進んでおり、より簡単にスケジューリングを行うためにアルゴリズムを使用する傾向も見られています。
現在、手術室に導入されるテクノロジーは年々増加しているため、手術室の準備はより複雑になり、時間がかかるようになっています。その結果、手術開始の遅延やキャンセル、順番を待たされる患者が増加します。
新しい患者のための手術室環境のセットアップは、シンプルかつわかりやすいものである必要があります。手術室向けのIPベースのビデオ統合(OR-over-IP)などのテクノロジーは、複雑さを解消し、準備時間を短縮するうえで有効です。OR-over-IPは標準アーキテクチャに基づいて構築されているため、設置が容易で、より短時間でセットアップできます。
手術室の業務はしばしば、多忙でストレスが多く、身体的な負担も大きいものとなります。手術室におけるデジタルテクノロジーの役割のひとつは、外科チームの労働条件を改善することです。より優れた環境を整えることで、外科チームは快適に手術を行い、迅速かつ正確な意思決定を行い、エラーを減らすことができます。
外科医の業務では常に「視覚的」な要素が重要であり、手術の際、外科医は非常に多くの処置や判断を目に頼って行っています。内視鏡とロボットの使用が主流になったことで、外科手術の視覚的要素にまったく新しい側面が加わりました。今日の外科手術では、ディスプレイ画面に加えてリモートストリーミングによる作業さえ求められますが、ここでもその中心となるのはテクノロジーです。視覚情報が重要となる領域は、内視鏡、室内およびブームアームのカメラ、超音波検査、PACS、患者情報にまで広がっています。16世紀の医師アンドレアス・ヴェサリウスが自分の目を頼りに人体解剖を始めたように、現代の外科領域では視覚情報の活用が非常に重要になっているのです。
では、手術室におけるヴィジュアライゼーションテクノロジーの要件とはどのようなものでしょうか。
医療画像は極めてシャープで画像の欠損がない(非圧縮でありオリジナルの画質が損なわれない)画像でなければなりません。4Kと3Dイメージングの登場によってイメージングのオプションが大幅に広がり、個々の処置における特定のニーズに合わせてテクノロジーを詳細に調整できるようになりました。人間工学の応用により使いやすさも向上し、より確信を持って処置を行うことができます。
ただし、画像の表示に数秒の遅れが生じるとなると、画質が最高クラスであっても意味がありません。手術室に最高のディスプレイを設置するとともに、外科医が作業部位を明瞭に確認しながら手技を行える理想的な環境を整える必要があります。この分野でも、OR-over-IPが活躍します。OR-over-IPを利用することで、画像を何の問題もなく、オリジナルの画像とまったく同じ形式で、遅延をほとんど発生させずに共有できるようになります。
上記を通して言えるのは、テクノロジーは、その存在がまったく意識されないほどスムーズに機能する必要があるということです。
テクノロジーは、その存在がまったく意識されないほどスムーズに機能する必要があります。
患者のターンオーバー時間とは、患者の診療後、次の患者の診療に移るまでの所要時間であり、次の要素から構成されます。
治療介入における要件は個々に異なります。ハイブリッド手術やロボット手術など、高度な技術による外科手術には専用の手術室の設置が必要になることもあります。さらに、複数の外科手術を連続して行う場合、手術室の構成を変えねばならない場合まであります。
テクノロジーの設定が複雑すぎると、治療を待つ患者への対応が遅れるリスクが高くなります。これは手術室における不満の要因のひとつです。テクノロジーの設定に時間が費やされている間、手術室はまったく活用できていません。たとえば、3Dディスプレイを備えた手術室を使用している状況で、2Dで画像を受信して表示する方が適した選択肢である場合、そのディスプレイで対応できるでしょうか。それとも、対応できるのは3D画像のみでしょうか。
IPベースのビデオ統合システムはプラグアンドプレイで機能します。このような柔軟性の高いシステムを導入することで、環境設定と診療の切り替えおよびデバイスの追加や削除がスムーズになり、ターンオーバー時間を短縮できます。ケーブルや追加の変換器、延長/分配器などのコンポーネントの数も少なくなるため、面倒な設定や不具合の心配も軽減されます。
「手術室ごとに異なる画像診断モダリティを購入することはできません。費用がかかりすぎるし、効果も限定的です。解決策は手術室間でのデバイス共有ですが、Nexxisはまさに最適のソリューションです。エンコーダーを接続して統合し、1本のケーブルでつなぐだけですぐに使用できます」
– Peter Müller博士
アウグスブルク病院(ドイツ)外傷外科、上級医師(Senior Physician)
すべてのテクノロジーは、設置と保守(ハードウェアの場合)、または設置とアップデート(ソフトウェアの場合)という2つの基本的な要件が満たされてはじめて正常に機能します。ユーザーは、この2つのプロセスが可能な限り迅速かつスムーズに進むことを望んでいます。
メンテナンス技術者は、事前にスケジュールを立てられることを希望します。そのため技術者の間では、手術室スタッフと新しいテクノロジーの両方のニーズおよび時代の変化に合わせてスムーズにアップデートできる、デジタル手術室への評価が高まっています。標準アーキテクチャに基づくネットワーク型ソリューションでは、ケーブルの配線は事前に完了しており、新しいソースやデバイスをいつでも追加できます。これも「プラグアンドプレイ」のコンセプトによるものであり、手術室の稼動中断時間を最小限に抑えて迅速にアップグレードできます。拡張性と柔軟性に優れたシステムは、ニーズの変化や成長に応じた調整や規模の拡大が可能です。
加えて、テクノロジーには避けることができない別の事態がいずれかの時点で発生します。それは、ダウンタイムです。ケーブルの不具合などの技術的な問題の根本原因の特定には、時間がかかるうえに、高度な知識や場合によっては高価な測定機器が必要です。
この記事も終わりに差し掛かっていますが、ここでも解決の鍵はソフトウェアが握っています。これは、最善の解決策は問題がそもそも発生しない(または深刻化しない)ことであるという事実に起因します。市場ではすでに、OR-over-IPシステムに接続し、システムを24時間体制で監視できるソフトウェアシステムが提供されています。監視業務は、医療機関が自ら行うことも、OR-over-IPシステムを提供するインテグレーターがリモートで行うこともできるため、業務負担の増加について心配する必要はありません。
この監視システムでは、OR-over-IPシステムを構成しているディスプレイやファイバーケーブルなど、手術室にある機器の状態を追跡します。システムはクラウドに接続されており、デバイスやケーブルのエラーを検出すると通知を送信します。
この機能がもたらすメリットは、問題の事前解決、治療中にインフラストラクチャがダウンするリスクの低減、必要な場合のみに限ったメンテナンスの事前計画を実現できることです。また、技術的問題が原因で手術室を使用できない時間を短縮するうえでも有効です。
今日の医療では、患者が求める水準は非常に高く、1分1秒が文字どおり収支に影響します。このような環境のもと、デジタル技術を活用することで生産性と効率を向上させることができ、高度なスキルを有する現代の一流手術室スタッフはさらに業務を改善できます。現在および将来の手術室では、外科医が最適な環境下で手術を行えるよう、高精度の画像や人間工学に基づき最適化された作業環境を提供することが目指されています。
しかし、テクノロジーは絶えず進化しています。したがって、将来においても常に要件を満たし続けるために、手術室は新たな技術を容易に導入できる、モジュール式の設計である必要があります。手術室の環境には、既存のインフラストラクチャの利用を完全に停止することなく、4Kイメージングなどの最新テクノロジーに対応できる柔軟性が求められます。テクノロジーの進化に対応し、将来にわたって手術室の要件をサポートし続けるためのソリューション、それがIPベースのビデオ統合(OR-over-IP)です。